森英樹先生逝去

 元名古屋大学教授の森英樹先生が亡くなられた。当地の憲法運動の牽引者であり、今の憲法状況を見るにつけ、まだまだ活躍していただきたかったと思う。合掌。

 私が名古屋大学法学部に入学したのはほぼ半世紀も前のことである。当時の法学部の教授陣は公法系と民刑事系に分かれ、公法系は、革新陣営の学者が占めていた。

 憲法は長谷川正安教授。講義を録音して、それを後に出版するというスタイルだった。森先生はまだ30歳そこそこの少壮助教授だったが、一部、漫談のようにも聞こえる話はうまかった。ほかに行政法の室井力教授、国際法の松井助教授、それに「ソ連法」という授業があり、稲子恒夫教授が担っていた。政治学の横越英一教授は一度愛知県知事選挙に革新統一候補として出馬したことがある。

 当時の法学部は出席をとるということはなく、あんまり真面目に講義を聴いていたわけでもない私には「感想」を述べるほどの思いはない。記憶があるのは、長谷川先生が「右翼」「左翼」というのはフランス革命後の議会で革命を進める側が左に、アンシャンレジーム派が右側に陣取ったことに由来する、と言っていたこと、稲子教授が、スターリンはいろいろ批判されるけれども自らの子を大祖国戦争(第2次世界大戦)の最前線に送り出し、戦死をさせたことは、他の国の戦争指導者と較べて偉いというようなことを言っていたことくらいだろうか。

 「70年代の遅くない時期に民主連合政府を」とのスローガンからはや半世紀が経とうとしている。歴史は一直線には進まないけれど、後退しているような局面もあるけれど、それでも少しずつでも前に進んでいるし、進めていかなければならないと思う。